日本財団 図書館


 

の研究が期待される。金子班では、高齢者の歩行が振子運動のように効率よく行われるかどうかに注目して、エネルギー変換の調整がどのように行われているかを研究している。
今年度は昨年度の高齢女性から高齢男性の分析に移り、性差について「男女の特徴は基本的に変わらない」とする結果を示した。すなわち高齢者では、歩行中の筋パワーが若年者より弱く、それが効率の悪い低速歩行の原因にもなっているということである。では果たして、筋パワーをアップするためのトレーニングを行ったらどうか。深代班はこの課題に挑戦するため、中高齢者にレジスタンス・トレーニングを課し歩行動作への影響を調べた。
その結果、脚筋力は明らかに増加したが、歩幅と歩調および股関節の開き具合には変化がなく、「膝をしっかり伸ばして歩く動作ができるようになった」という。歩行運動は、原始歩行が示すように本能的であり、また日常生活の中で習慣的に行われている基本的な運動であるだけに、筋力トレーニングの効果が即座には出にくいのかもしれない。しかし、筋力強化による「力強い膝伸展」の出現は、高齢者の健康・体力の維持にとって極めて示唆に富む有用な知見である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION